三菱製紙 統合報告書2023
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69中期経営計画1年目が終わりましたが、経営に対する評価はいかがでしょうか?コーポレート・ガバナンスを強化するために、今後何に取り組むべきだと思われますか?片岡 ドイツのフレンスブルク工場の売却、株式会社カツマタの事業譲渡、その他統廃合による合理化が進められています。5年前から、王子ホールディングスが筆頭株主となりましたが、社外取締役としては、利益相反行為には目を光らせ、それ以外の少数株主の利益を害することがないように監督をすることが重要な責務と認識しております。一方、そのような事態はなく、王子ホールディングスとの業務提携は、継続的なシナジー効果を生んでいます。数字にして年間30億円近い成果が出ています。こういった点も効果的に広報できればと思っています。篠原 三菱製紙はこの1年、広くリスク抽出し、リスク情報の共有と対応など、リスクマネジメントに力を入れていると実感しています。また将来を見据えて人財育成、特に幹部教育にも取り組んでいます。頑張っただけ社員が報われる組織になってきていると思います。基盤強化を進めつつ、中期経営計画の課題に着実に取り組んでいます。片岡 取締役会自体も発言数が年々増え、活性化が進んでいると感じます。「発言するな」というオーラが出ている会社の存在も耳にしますが、三菱製紙にそんな空気はありません。渡邉 一方で原燃料価格の高騰などの外部要因に業績が大きく左右された年でもありましたね。難しいことだとは思いますが、外部要因に影響を受けにくい体制づくりが今後の課題ではないでしょうか。篠原 その通りですね。そのためには技術力を活かし、製品価値を高めることが重要です。いかなる状況でも利益が確保できる競争力ある先進的な製品を開発する必要があると思います。三菱製紙はB to Bの製品が中心ですが、大きく発想を変え、女性の視点も取り入れてB to C領域に挑戦してもいい。商談にも商品開発にもどんどん女性が出ていってほしいですね。片岡 企業は、今やコンプライアンスは当たり前で、「誠実」や「高潔」を意味する「インテグリティ経営」や自社の存在意義を明確にして社会に貢献していく「パーパス経営」を実現していくことが求められます。今年春の「三菱製紙グループ企業行動憲章」の改定は、インテグリティおよびパーパス経営に向けた第一歩だと思います。すべての役員がこの憲章を理解し、その理念を全社員の行動へとつなげていくことが大事です。渡邉 人に対する教育も大事です。三菱製紙は製造業ですから、教育や研修を通して労災や長時間労働などが起こらない組織作りが必要です。また業績の数字からは見えない部分、例えば出産・育児や介護など社員一人一人が抱える問題と業務の両立への取り組みと研修や、公正な取引の観点から取引先や下請け企業などで働く人との適正な関係性の構築に向けた研修も必要です。そんな話題を取締役会で取り上げていただければと思っています。篠原 コーポレート・ガバナンスはすべてのステークホルダーと透明かつ適切平等に協働することですから、従業員が自律的に働ける会社を作ることでもあると認識しています。働いて楽しい会社になれば、不正もなく、製品品質も向上していきます。また社員が色々な部署を経験できるようにすることで一人一人が会社の問題点を見出したり、三菱製紙の強みを再認識することにつながり、益々の発展が期待できると考えています。片岡 これまで日本の製造業は事業リスクを洗い出し、そのリスクを潰すことで品質向上に成功してきました。他方、チャンスに対してそれに伴うリスクにナーバスになりすぎ、日本経済の停滞を招いていると感じています。これからは、リスク対応のみでなく、チャンスを逃さずに未来につなげていけるようにならないといけないと思います。そのような視点から提言を行うことも社外取締役の責務だと考えています。

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