三菱製紙 統合報告書2023
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71社外監査役の立場から、現在の三菱製紙のどのような点に注視していますか?社外監査役として今後どのようなところに取り組みたいですか殿岡 先ほど転換期という話が出ましたが、監査役としては中期経営計画をはじめ大きな改革を社員がどのように受けとめているか見ることも大事だと考えています。たとえば日本企業では愛社精神が社員の安全や健康を損なってしまうことがあります。「会社が大変な時だから頑張ろう」と結果的に無理な行動につながっていないか。愛社精神が悪いということではなく、やはり社員が幸せで働きがいを感じている会社であることが第一です。それがひいては株主や顧客に良い結果をもたらし、企業価値を高めていくのだと思います。滝沢 経営者は中長期と短期の複眼で戦略を考えますが、一般の社員は短いスパンで仕事を捉える方が多いと思います。従って、痛みを伴っても中長期的には進めなければならない改革などについて、それを行う意味をきちんと経営者が説明し、社員に理解してもらうことが大事です。三菱製紙では、社員と会社のつながりの強さを数値化する「エンゲージメント・サーベイ」を行っていますが、社員の会社に対する意識は、企業風土を生み出す重要な要因です。これは定期的に続けて定点観測すべきだと思います。大塚 企業風土は、企業の価値創造の礎となる点から私も重視しています。これは社員個人の「性善説」に依拠するのではなく、経営者による組織としての仕組みづくりにより、社員を正しく守り育てる姿勢が問われるのだと思います。また、今回新しく女性の社外役員が加わりましたが、多様な視点の注入により、良い化学反応を期待しております。殿岡 新卒採用も復活し、新入社員は女性が多いそうですね。大塚 採用や育成、といった人財マネジメントにも着目しています。いまは会社が人を選ぶのではなく、会社が選ばれる時代です。楽しくいきいきと働けない会社は選ばれなくなるし、結果的に魅力ある製品を生み出せなくなります。殿岡 その通りです。それに若い人が入らないと会社は高齢化します。新人が育って、また次の新人を引っ張っていく。そういったサイクルが継続されることを期待します。殿岡 今期は構造改革を進めながら営業利益60億円を目指します。非常に大きなチャレンジですから、目標達成に向けてきちんとしたプロセスが踏まれているかをしっかり見ていくつもりです。また、株主だけでなく、社員、お客さま、取引先、社会等、多様な観点からの経営チェックも重要です。滝沢 三菱製紙はプライム上場企業として、様々なステークホルダーに満足してもらえているかという点にも気を配りたいと思います。この先も非財務情報の開示が拡大し、注目を集めると思いますので、技術、特許、人財など、いわゆる無形固定資産の価値をマーケットに評価してもらえるようにしないといけないと思っています。また、私は監査役に就任して以降、八戸、北上、京都、高砂と、主力工場を訪問しましたが、今後とも現場に赴き、社員の方々の声をお聞きしたいと考えています。また、同じ社外という立場から社外取締役の方々とも連携して、会社の課題発見に努める所存です。大塚 実効性ある監査は、いかに多くの情報を集め、適切に分析、判断できるかにかかっています。情報にアクセスしやすい常勤の立場を活かし、社内の生の声を聞き、監査役間で知恵を出し合い、的確な提言を行っていきたいと思います。長年「クライアント・ファースト精神」で仕事に向き合ってきましたが、社外役員の立場からも、監査における透明性、公平性を常に意識し、その先にある各ステークホルダーに向けて職責を果たしていきたいと思います。

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