12トップメッセージとがその難しさを象徴していました。 一方で、私たちはこの期間、克服すべき課題を明確にしつつ、大胆な構造改革も着実に実行してきました。その第一歩目がグループ子会社の抜本的な再編です。最もドラスティックな改革の一つが、グループ子会社を25社から11社へと大幅に削減した組織合理化です。この改革は、経営陣の一方的な号令ではなく、全従業員が自ら課題を洗い出し、徹底的に議論を重ねることで推進されました。「組織がサイロ化し、ガバナンスも効いていない」「重複した業務が多く、非効率だ」という共通認識が、改革の推進力となったのです。会議室での議論だけでなく、現場の意見が吸い上げられ、一つひとつの統合プロセスに活かされました。 例えば、ある営業部門の統合では、「これまでの担当顧客が変わり、引き継ぎに時間がかかるのではないか」といった懸念の声が上がりました。これに対し、統合先の営業チームと合同で顧客訪問を重ね、両社の強みを組み合わせた新たな提案手法を見出すことで、かえって顧客満足度が向上するという事例が生まれました。また、生産部門の統合では、「自社独自の技術ノウハウが失われるのではないか」という不安に対し、各工場の技術者が集まって技術交流会を定期的に開催し、ベストプラクティスを共有することで、全体の生産効率が飛躍的に向上しました。この子会社統合は、単に経営資源を最適化するだけでなく、各社の連携を深め、部門間の壁を低くし、より迅速な意思決定を可能にしました。組織はよりスリムで機動的になり、大きな変化に対応できる柔軟性を手に入れたのです。 また、非コア事業や資産の売却も進め、ドイツのフレンスブルク工場の売却を決定・実行しました。今後は、ビーレフェルト工場の収益力を強化しつつ、米国販売子会社との連携を強化し、日本国内で開発した機能商品分野の戦略商品をグローバルに拡販推進していきます。 こうした構造改革の成功体験は、個別の事業にも大きな成果をもたらしました。特に、紙素材事業の長年の課題であった八戸工場の黒字への回復を達成できたことは、当社の変革を象徴する出来事です。青森県八戸市に位置するこの工場は、臨海型の立地を活かしたパルプから紙の一貫生産という国内トップクラスの生産体制と、高い技術力を持ちながら、長らく赤字が続いていました。抜本的な改革を断行し、生産効率の改善、エネルギーコストの削減、そして製造プロセスの徹底的な見直しを進めました。具体的には、物流管理システムの導入や、積極的な省エネを実施し、さらに現場からの「カイゼン活動」を積極的に展開しました。ある従業員からは、「紙の断裁工程で出る端材を、別製品の原料として再利用できないか」という提案があり、このアイデアが実現したことで、廃棄物削減とコストダウンが同時に達成されました。また、工場内の照明をLEDに交換するだけでなく、昼間の自然光を最大限に活用する仕組みを導入するなど、小さな改善を積み重ねた結果、ついに工場単体での黒字化を達成しました。この成功体験は、従業員のモチベーションを劇的に向上させ、「やればできる」という前向きな空気を、紙素材事業全体に生み出しました。信頼回復への道 今般判明した品質不正問題については、お客さまをはじめ関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます。この問題の根底には、長年にわたる慣例や、現場の風通しの悪さ、そして品質保証体制の不備がありました。
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