三菱製紙 統合報告書2025
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14トップメッセージマーケットインへの転換 中期経営計画では、単に売上を増やすだけでなく、収益性を徹底的に追求します。そのための鍵は、当社従来の「プロダクトアウト」の文化から、「マーケットイン」へ抜本的に転換することです。当社は、優れた開発力があるがゆえに、マーケットニーズの検証よりも技術シーズ優先で、製品開発を進めてしまう傾向がありました。しかし、それでは開発製品による売上高の大幅な伸びが期待できず、開発に費やした人工や費用、設備投資の回収可能性も低くなってしまいます。 そこで、昨年度、研究開発本部に「研究開発企画部」を新設しました。この部署が中心となり、マーケットニーズや、競合他社動向・社会トレンドの分析を行い、その上で開発テーマのマーケット適合性を厳しく精査し、将来の成長につながる案件を厳選する体制としました。また、開発部隊を各工場に併設させ、製品開発の初期段階から営業部門や製造部門も巻き込み、各部門の知見を融合させることで、より完成度の高い製品を生み出す体制を整えました。さらに、事業化を断念・中断した案件についても、その原因を徹底的に分析・検証する体制を構築しました。これは、単なる反省ではなく、次の成功に向けた「勉強代」と捉え、知見として蓄積していきます。この知見は社内で共有され、未来のイノベーションの土台となります。これにより、研究開発の投資対効果を最大化し、着実に成長に繋げていく仕組みを構築します。 機能商品事業は、研究開発力強化の効果を成果に繋げるべく、情報・画像メディアや機能性材料の高付加価値化を進め、グローバル展開と市場シェア拡大を加速します。紙素材事業では、包装用紙や国内材100%パルプの用途拡大による、環境配慮商品の拡販と生産性向上を進めます。特に、八戸工場と北上工場の運営一体化、DX・省力化投資による効率化と競争力向上を実現し、輸出の拡大も目指します。② 地球環境への貢献を“SHINKA”(進化): 持続可能な社会への貢献 気候変動への対応は、もはや企業活動の前提です。私たちは、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速し、2030年度のCO₂排出量を2013年度比40%減とする中間目標を掲げています。これを達成するために、石炭ボイラーの燃料転換やグリーンエネルギーのフル活用に加え、地域・異業種との連携による次世代エネルギーやCCS(二酸化炭素回収・貯留技術)の可能性も検討していきます。循環型社会への貢献として、森林資源の無駄のない活用を推進し、プラスチック資源の再資源化率を2027年度には100%にすることが目標です。過去3年間で、省エネ推進により2024年度には2013年度比でCO₂排出量を22%削減し、TCFD情報開示を含むサステナビリティ情報開示も強化してきました。これらをさらに加速させていきます。③ ガバナンス・人的資本経営の“SHINKA”(浸化): 未来を拓く羅針盤 当社は、120年を超える歴史の中で培ってきた高い技術力と、それを支える従業員という「人的資本」を最も重要な資産と捉えています。中期経営計画の成功は、この人的資本をどれだけ活かせるかにかかっています。30億円を計画する人財戦略投資により、職場環境整備、DX・省力化、人財採用・育成を強化します。 多様なバックグラウンドを持つ人財の採用促進や柔軟な勤務制度の充実を図り、女性管理職比率15%、外国人雇用者数60人などの目標を掲げています。また、創立130周年に向けて、全従業員で「クレド(行動指針)」の策定を進めています。これは、経営陣が一方的に与えるものではなく、三菱製紙が今後どうあるべきか、という問いを皆で考え抜くことで、従業員一人ひとりが会社の未来を「自分ごと」として捉え、強い帰属意識と誇りを持てるようにするための取り組みです。このクレドは、日々の業務における判断基準となり、全社が一つの方向を向いて進むための羅針盤となると期待しています。“SHINKA”する130年  企業に向けた取り組み施策① 技術・研究の“SHINKA”(深化):

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