74ガバナンス・人的資本経営を“SHINKA”(浸化)/ガバナンス社外監査役座談会滝沢 今回の不適切事案は、約40年以上も前から行われており、非常に長い期間だったため事実関係の把握に苦労しました。特別調査委員会は、関係者へのアンケートや退職者を含む当事者との面談、データフォレンジックなど、あらゆる手を尽くして調査したと思います。結果として、事実関係はかなり明らかになりました。 調査の間、取引先への事情説明や製品の安全性確認も並行して行わねばならず、執行サイドは大変だったと思いますが、この事案を心から重く受け止め、お客さま第一の姿勢で真摯に取り組んでいました。 再発防止のための枠組みは整いましたが、それはあくまで初動との位置づけです。その先にある「中身」がしっかりと実行されているか、今後も継続的に見ていきます。この問題の根源には、会社の風土やカルチャーも関係しており、これはゴールがない世界です。昨年度から全社を挙げて「クレド(行動指針)作成プロジェクト」が進行中であり、会社の一体感醸成やカルチャー改革に邁進してもらいたいと思います。大塚 本件は、前中期経営計画の柱である構造改革の一環で発覚したもので、私は、ある意味実った「果実」だと思っています。 この一年間、様々な専門家等の助言を聞きながら、取締役会が現場とともに、会社一体で対応に当たれたことは非常に良かったと思います。社外役員や監査役への情報共有がタイムリーに行われ、様々な知見からアドバイスをインプットできたことも、適切な対応に繋がったと思っています。会社の真摯な姿勢を少しでも感じていただけると有難いと思っています。 なお、今回の問題は、何か大きな悪意をもって行われたというより、上下関係や仕事の仕方といった組織文化の中で、いつの間にか間違った方向に進んでいった一例です。本件は三菱製紙の皆にとって、変わるための良いきっかけにしなければなりません。この反省や気運が風化しないよう、見守り続けていくことが監査役の仕事だと改めて感じています。 住吉 これからの中期経営計画で何を見ていくか、もし一つだけ選ぶとすれば、私は「人財」だと答えます。戦略や戦術は環境変化に応じて機動的に変える必要がありますが、それを担保するのはやはり人です。今回の中期経営計画でも、「人財」に対する投資が非常に強調されていることを強く感じます。 当社は研究開発に強みを持つ会社だと伺っています。レッドオーシャンの市場で、自らブルーオーシャンの世界を創り出す、その先頭に立つのは間違いなく人財です。だからこそ、人財の意識や行動がどのように変わっていくのか、そしてどのような方々がその役割を担っていくのか、という点に一番注目したいです。皆さんとの対話を通じて、生の声もたくさん聞いてみたいと思っています。滝沢 今回の中期経営計画は、2028年の創立130周年を見据えて策定されました。トップの「こういう会社にしたい」という強い意思と、現場の現実的な議論がうまく融合した計画だと感じています。特に「SHINKA」というキーワードにはポジティブな響きがあり、全社を引っ張っていく力があると思います。 この計画の柱であるR&Dは、まさに人が重要です。プロダクトアウト(自社主導)とマーケットイン(顧客主導)の両面をうまく融合させなければ、R&Dは実を結びません。お客さまの現場に赴き、生の声を聞き、困りごと中期経営計画への期待と モニタリング
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